2013年10月24日木曜日

トルコ・レシピの罠


トルコ食品企業の展示会出展支援の際に、トルコ食材のサンプルをいろいろと頂きました。世界有数の小麦生産量を誇るトルコのこと、基本的にはパスタやブルグル(ひき割り小麦)、またはそれに準じる物が多い中、『イルミックIrmik)』は特に嬉しい一品でした。



イルミック』とは、セモリナ粉のこと。トルコでは【ヘルワHelva)】と呼ばれる甘~いお菓子を作るのによく用いられます。SELVA社は4種類のイルミックを販売しており、他にオレンジ味、イチゴ味、バナナ味とありますが、今回頂いたものは『バニラ・フレーバー』。

さっそく材料を用意して、バニラ風味ヘルワを作ってみることに。レシピだったら大丈夫、ちゃんとパッケージに記載されています。

それでは、レシピを参照しながら、ガッツリ甘くてハイカロリーなトルコ菓子【ヘルワ】を作ってみましょう♪


~材料~

・バニラ風味イルミック…水用グラス2杯分

・砂糖…水用グラス1.5杯分

・牛乳…水用グラス1.5杯分

・水…水用グラス2杯分

・バター…125

・松の実…食事用スプーン1匙

まずここで、「ん?」と思われた方も多いのではないでしょうか。


水用グラスって何だ?」

食事用スプーンて?」

はい。

トルコ料理のレシピにおいては、計量の仕方が日本とは異なります。「水用グラス」「大チャイグラス」「小チャイグラス」「コーヒーカップ」「食事スプーン(またはスープ用スプーン)」などを用います。
そこは世界三大料理のひとつ、トルコ料理。計量ひとつとってもグローバル・スタンダードに屈することなく自国の伝統的方式を貫いています。
ちなみに、チャイグラスとはトルコ・チャイを飲むのに用いられるチューリップ型のくびれのあるグラス、コーヒーカップはトルコ・コーヒーを飲むのに用いられる小さめのエスプレッソ・カップのようなものです。

「そんなの家庭によってグラスやらスプーンやら大きさ違うじゃん!」と突っ込みたくもなりますが、一応以下の基準があります。

・水コップ;250ml

・大チャイグラス;125ml

・小チャイグラス;100ml

・コーヒーカップ;75ml

また、計るのは必ずしも液体に限らず、計る材料によっては量も変わってくるため、私は下記の表を参照しました。

 
こちらによると、イルミックの「水用グラス2杯分」は「300g」、砂糖の「水用グラス1.5杯分」は「255g」となります。ふむふむ。松の実は載っていないので、まあ適当に1015gくらいでいいか。


~作り方~

鍋にバターを溶かして、イルミックの色が変わるまで弱火で松の実と一緒に炒めます。小鍋に水、牛乳、砂糖を入れて温め、砂糖を溶かします。このミックス液を茶色くローストしたイルミックに加えて、よく混ぜます。鍋を火から下ろし、蓋をして10分蒸らして出来上がり。


…とても簡単ですね。これならお菓子作りに慣れていない私にだって簡単にできる~♪

125gというバターの塊に慄き、255gと言う砂糖の分量に罪悪感を感じつつも、えいや!と雑念振り払って鍋にぶち込んで着々とステップを踏んでいき、「茶色く焦げたイルミックに砂糖入りミルク投入」の段階で、ふと気になってもう一度パッケージを見てみました。

「ちなみに…レシピの分量ではイルミック300gが基準だけど、もちろん一袋300g入ってるってことなんだよね?」

ゴミ箱から漁りだした空のパッケージを見て、愕然としました。

250g入り】


…ハァ?


一袋250gなのに、レシピは300g基準ってどういうこと?50gの差が致命的に大きいことくらい、私にだって分かるのに。

300gが作りやすい分量なんだったら、なぜ一袋300gでパッケージ化してくれない?

なんで?なんでなんで?ねえなんで????


SELVA社の社員の胸ぐらつかんでユサユサしたい衝動に駆られつつも、とりあえずここからどう軌道修正しようかと真っ白な頭をフル回転させ、さしあたっては砂糖入りミルクの投入を6分の5程度に加減して投入。


そしてどうにか完成。

鍋いっぱいにできたヘルワを適当なサイズに切り分けて頂きます。
                               



途中で気が付いたおかげでそれなりにちゃんとヘルワの味にはなりました。しっとりしていてホロホロほぐれる優しいお味。一度食べたら病みつきになるかもしれません。

まあ甘くて油(バター)がたっぷり入っていれば、それなりにらしくなるざっくりしたお菓子なのでしょう。

このテキトーかつ大らかな匙加減、それこそがトルコの魅力だったなということに、改めて気が付かされた次第です。
「なんで?」と思ったらご注意を。それは既に魅惑の迷宮の入り口。

大体にして計量自体が【水用グラス】とか、改めて、奥が深い。

そもそも、ホットケーキミックスを作りやすい150gで分包してくれるような日本の、消費者目線に基づいたきめ細やかなサービスの方が、世界規模で見たら稀有なのかも知れません…。


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