2015年11月27日金曜日

ロシア軍機撃墜事件の経済的波紋

<トルコとの貿易・輸出入、トルコ投資、トルコ進出を考える日本の企業様へ>

G20も無事閉幕し、対ISで足並みを揃えようという矢先、11月24日にシリアとトルコとの国境付近で起きたトルコ軍によるロシア軍機撃墜事件は、世界中を大きく揺るがす大事件だった。
これまでもアサド政権をめぐるロシアとトルコの政策上の不一致などは日本でも多少報じられてきたが、今回の事件で新たにシリア内トルクメン人の存在なども報道上明るみに出て、この地域にまつわる各国の思惑や状況はさらに混迷を極めている。


撃墜に関しては、トルコ側は「国家の安全を守る権利」「10回に渡る警告」「ロシア機と知らなかった」と主張しているのに対し、ロシア側は「領空侵犯していない」「警告はなかった」「ロシアの飛行機と分からないなんてあり得ない」など、意見は真っ向から対立し、両国の緊張は高まるばかりである。さらにはエルドアン大統領が「プーチンに電話をかけたが出なかった」と発言しているのに対し、ロシア外相は「プーチン宛にエルドアンからの電話はかかってきていない」と反論。もはや水掛け論である。

ロシア政府は、この件に関して「トルコと開戦する気はない」とするものの、一切の謝罪も保障の申し出もないことに対して相当怒っており、経済制裁を加えることを宣言している。

具体的には、トルコとの共同投資プロジェクトの凍結やトルコ産農産物・食料の輸入制限などを含む対抗措置を策定。さらに、トルコ━ロシア間の航空便の運航制限や共同の自由貿易区開設に向けた準備停止に加え、ロシア産天然ガスをトルコ経由で欧州に供給するパイプライン「トルコストリーム」やロシアがトルコで建設中の原発などの大型プロジェクトについても制限を加える可能性も示唆している。

天然ガスの年間使用量の半分以上をロシアからの輸入に頼っている(2014年資料では総輸入量の54.76%)トルコとしては、本格的な冬を目前にガスが止められることへの懸念が噴出している。この危機に対して、代替案は一切ないという。

トルコでは発電の48%を天然ガスに頼っている。すなわち、暖房用だけでなく、発電と産業の面からも天然ガスの比重はとても高いというわけである。昨年のガス使用比率を見ると、48%が発電に使われ、25%は産業、20%が住宅、6%が公的機関などとなっている。

天然ガス依存を解消するための代替として挙げられたエネルギー源である原子力発電も、やはりロシアの協力が欠かせない。トルコ南部のメルシンはアックユで稼働が計画されているトルコ初の原子力発電所への投資はロシア政府関係の企業が行っている。

(以上、Hurriyetより)

天然ガス以外にも、ロシアとの貿易上の関わりは非常に深い。

食料輸入制限に関わるトルコのニュースを見つけたので、ご紹介したい。

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『ロシア、トルコからの鶏肉輸入を停止』


トルコによるロシア機撃墜事件以降、両国間の緊張は続いている。ロシアのインターファックス通信の報道によると、ロシアは、トルコからの鶏肉の購入を12月1日付けで停止すると発表した。

トルコがロシアに対して行っている重要な輸出項目の一つが鶏肉である。
昨年はロシア向けに1600万ドルの鶏肉を輸出。この数字は、2015年末には2350万ドルに達すると予測されていた。

トルコとロシアの間には7億ドルの輸出市場があり、鶏肉の輸出市場全体に占める割合は2%である。
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ロシアはトルコにとって経済的に重要なファクターの一つ。
この緊張がさらに悪化しないことを願うばかりである。

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2015年11月20日金曜日

イスタンブールが世界新興都市TOP10入り

<トルコとの貿易・輸出入、トルコ投資、トルコ進出を考える日本の企業様へ>

 ジョーンズラングラサール(以下JLL)の調査報告書にて、トルコ最大都市のイスタンブールが『世界の新興都市』に選ばれた、と11月6日付けのSABAH紙が伝えている。


以下、主な部分を翻訳・転載する。

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企業不動産コンサルティングの分野でサービスを行うJLLは、「都市インデックスと都市の新世界」というタイトルの調査を完了した。世界の各都市を発展・発展途上・新規という三つのメインカテゴリーでランキング。イスタンブールは、上海北京サンパウロと並び「世界の新興都市」カテゴリーにランクインした。調査において、この三都市も中規模および大規模な経済の社会的・経済的首都と位置付けられ、「これらの都市は、グローバル企業の貿易及び投資分野におけるハブ的立場にある。未だに『新興』と呼ばれてはいるものの、実際それぞれが『世界都市』への途上にある。」とされた。調査によると、幅広い国内および地域市場への入り口であるこれらの都市は、戦略的に重要な立地とダイナミックな労働力市場のアドバンテージを利用して、さらに高みのセクターへと上りつつある。

調査において、イスタンブールの経済的特性で重要な分野として、商業・観光・交通が挙げられた。イスタンブールサンティアゴは、地域において最も強固な交通システムを持つ二大都市として特記された。サンパウロムンバイに並び、地域におけるイノベーションの中心になっているイスタンブールが、このキャパシティをアドバンテージに変えて商業化し始めたことが指摘されている。この調査によると、中国を除き、都市消費者需要で増加が予測される中心地のひとつとして、ジャカルタムンバイに並んでイスタンブールが上がっている。2030年までに上海及び北京の可処分所得は3500億ドルに及ぶと考えられる。この数字は、ロンドン東京では2500億ドル、イスタンブールでは2000億ドルを超える。周期的な変動はあっても、2009年下半期に土台が作られた金融センター事業でもって、イスタンブールは『自らを金融センターと位置付ける新興の世界都市』の中で上昇を続けている。

アーンスト&ヤング(以下EY)は、『中央・南東ヨーロッパM&A及び買収取引のバロメーター2015年6月報告』を発表した。報告書では、上半期は2014年に比べて取引値ベースで著しく落ち込んでいるにも関わらず、トルコが33億ドル相当の155件のM&A及び買収を実現したことを指摘した。EY企業ファイナンス部長ミュシュフィク・ジャンテキンレルは、上半期に起こった政治・経済の不透明さにも関わらず、トルコの中長期での高い成長ポテンシャルとポジティヴな経済指数が外国人を魅了したと話す。最もM&A及び買収が多かったのはITセクターである。

外国人投資家の人気を博しているイスタンブールは、競争力のある巨大都市ランキングでも、クアラルンプール台北メキシコシティと争っている。調査によると、「世界の発展都市」カテゴリーにはロンドンニューヨークパリ東京が挙げられる一方、香港シンガポールも最近この4都市に加えられたことが報告されている。長期的には上海もこのカテゴリーに加えられる可能性も指摘されている。
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再選挙の結果政権が安定したことにより、しばらく停滞気味だったトルコ経済も躍進の兆しを見せている。イスタンブールの世界都市ランクインはその象徴とも言えそうだ。

今後の展開が楽しみである。

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2015年11月13日金曜日

トルコ、アンタルヤでG20開催

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11月15-16日、トルコの南西部にあるリゾート地アンタルヤで、G20が開催される。
これを、『危機地域のど真ん中でのG20開催』と題したコラムが11月13日付Radikal紙に掲載されており、なるほどと思ったので、翻訳・転載する。

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『トルコ、G20を危機的地域で開催』 13/11/2015 by Murat YETKIN

G20サミットで世界の指導者を迎え入れるにあたり、一方で4つの外交政策の方程式を、それぞれ互いに関係し合うものとして同時に、即ち「同時進行で」解決しなくてはならない。もちろん、痛ましいクルド問題のことも忘れてはならない。この件も、そもそもシリア、イラク、イランと切り離されてはいないのだ。

トルコは、世界の産業国と新興経済国が一堂に会すG20を、11月15-16日にアンタルヤで、様々な危機に見舞われている諸地域のど真ん中で開催する。

実際に地図を開いて、コンパスの支点をアンタルヤに置き、半径1000kmの円を描いてみてほしい。円で囲った地域で、世界の非常に重要な危機が存在することが分かるだろう。

北にウクライナ、南にエジプト、イスラエル-パレスチナ紛争、西にはコソボ、東にはアゼリー-アルメニア紛争、その最中にギリシャで続く経済危機、キプロスでは終わりの見えない対立、そしてもちろん、イラクとシリアの内戦を包括している円である。

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おそらく、それゆえに、トルコG20がタイイプ・エルドアン大統領が行うオープニングディナーでの議論のテーマをシリア危機として提案することに、さしたる異議も出なかったのだろう。

外務大臣フェリドゥン・シニルリオールがロシアの外務大臣セルゲイ・ラブロフに個人的に電話をかけてアンタルヤでの会談を求めたのは、これと関係している。

なぜなら、ロシア連邦大統領ウラジミール・プーチンは、G20で政治危機の議論が国連安全保障理事会における拒否権を弱めるという考えから、これまでサミットに外務大臣と一緒に行くことがなかったからだ。

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しかし、ついに昨日、アメリカ大統領バラク・オバマがアンタルヤ・サミットで他のリーダーたちとシリアについて重要な会談を行うと明らかにしてから、シリア問題はアンタルヤ・サミットにおいて、おそらくサミットのそもそものテーマである経済的包括性よりも前面に出る可能性が出てきた。

サミットの前日にウィーンにて外務大臣レベルでのシリア問題会談(アメリカ、ロシア、サウジアラビアと並んでトルコが中核的な4か国の一つとして参加)が持たれることは、ロシアも異議を軟化させたことを示している。

そもそも世界人口の3人に2人、世界貿易の80%、世界GDPの85%を代表するリーダーたちがシリア内戦にこれほど近い距離にいる時に、話し合わないことの方が奇妙である。

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地域における危機が地球規模の政治と、引いては経済に影響する時に、トルコはそのとばっちりを過剰に受け、必要以上に危機の一部に陥ってしまった。

G20サミットで世界のリーダーたちを迎え入れる際、一方で4つの外交政策方程式を、それぞれ互いに関係し合うものとして同時に、すなわち「同時進行で」解決しなくてはならない。もちろん、痛ましいクルド問題を忘れてはならない。この件も、そもそもシリア、イラク、イランから切り離されていないのだ。

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アフメト・ダウトオール政権が同時に取り組み、展開させなければならないこの4つの方程式とは下記の通りである。

1- シリア内戦がもたらした諸問題。もはやこれらの中でISISのテロ組織が最重要課題に浮上している。(ISISに対する包括的空爆の準備が進められているとの報がある)

2- シリア内戦が生んだ難民問題がEUで最大の政治的問題となっていること、またEUがこの件でトルコの協力を必要としていること。

3- トルコが、シリア難民危機がもたらしたチャンスでEUとの関係活性化の方向に進むこと。

4- そして最終的に、トルコ-EU関係の発展に立ちふさがるキプロス問題の解決のため、国連監視の元で進められる話し合い。

状況は非常に込み入っていて、トルコ一国の態度いかんで解決できないほどに裾野を広げてしまったようである。

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従って、G20アンタルヤ・サミットでのシリア問題において-もちろん奇跡的な解決ではないにせよ-何らかの進展が生まれることは、トルコだけでなく、関わる全ての国家の内情をある程度緩和し、緊張を少しでも和らげてくれることだろう。

しかしいずれにしても、完全に経済的な目的で設立されたG20がこれほど真剣に政治的な問題を-トルコの提案により-議論することは、G20の将来における政治的影響に関して新たな考えが提示される可能性も出てくるだろう。

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アンタルヤといえばトルコのリゾート地というイメージが先行していたので、危機を抱える地域の真ん中に位置しているというのは斬新な発想だった。それほど、トルコが今世界を揺るがす諸問題の中心に位置し、鍵を握る国であることがよく分かる。
各問題の解決に向けてどのような役割を果たすことができるかで、今後のトルコの世界的な位置付けが決まってくるのだろう。この混乱に巻き込まれて泥沼化することだけは避けてほしい。

G20の行方を注視したい。


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2015年11月9日月曜日

ノーベル化学賞受賞のトルコ人

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今年、日本人二名のノーベル賞連続受賞のニュースに日本中が沸いたのは記憶に新しいが、トルコ出身の学者もノーベル賞を受賞しているので、ぜひご紹介したい。

http://www.hurriyet.com.tr/nobel-kimya-odulunu-turk-asilli-aziz-sancar-kazandi-aziz-sancar-kimdir-30255503

『トルコ出身のアジズ・サンジャル氏、ノーベル化学賞を受賞!』
Hurriyet紙 2015年10月7日付

2015年ノーベル化学賞にアメリカ・トルコの二重国籍を持つアジズ・サンジャル氏、アメリカ国籍ポール・モドリッチ氏、スウェーデン国籍のトーマス・リンダール氏が選ばれた。
アジズ・サンジャルは、読み書きはできないが教育熱心な両親のもと、8人兄弟の一人としてトルコ南東部の古都マルディンに生まれた。トルコ人としては2006年に著名な小説家であるオルハン・パムク氏もノーベル文学賞を受賞している。


スウェーデンのノーベル賞委員会の発表によると、サンジャル氏、リンダール氏、モドリッチ氏の三名は、細胞が損傷したDNAをいかにして修復するか、また遺伝情報をいかにして保護するかに関しての遺伝子マッピング研究により、2015年ノーベル化学賞を受賞した。この調査は、新たながん治療の発達に寄与した。

アジズ・サンジャル博士教授は、がん治療において「周期時間」を発見し、世界的に評価されていた。

マルディン生まれ
69歳のサンジャル氏は、マルディン県サヴル郡で、読み書きを知らない、ただし教育を重視する8人の子を持つ両親の子として生まれた。イスタンブール大学医学部を終了したサンジャル氏は、1977年にダラスのテキサス大学で博士課程を修めた。サンジャル氏は既にノースカロライナ大学医学部生化学・生物理学部で教鞭をとっている。
サンジャル氏は国外で行った調査活動でアメリカ国立科学アカデミーに迎えられた3名のトルコ人の内の一人となった。

ノーベル化学賞受賞者発表の記者会見で提示されたDNAモデル

ノーベル賞委員会による発表において、人のDNAは日々紫外線やフリーラジカルその他の発がん性物質によるダメージを受けていることが指摘され、次のように説明された。

「ただし、この種の外的要因なしでも、DNA分子は遺伝的に変異する構造を持っている。細胞のゲノムでは日々数多くの変異が起こっている。さらには、人体における細胞は日々何百万回も分裂し、その際DNAはコピーされる。DNA複製の際にいくつかの損壊が起こる。遺伝的物質が化学的カオスに陥らないのは、常にDNAを監視し生じた損壊を修復する分子システムを内包しているためである。2015年ノーベル化学賞は、この修復システムがどのように働くかを分子レベルで明らかにした調査によって、この分野で新時代を開拓した三名の科学者に贈られることとなった。」

マッピングはアジズ・サンジャル作成
スウェーデン王宮科学アカデミーは、賞に値すると見なされた三名の科学者について次のように紹介した。

「1970年代初頭、科学者たちはDNAが極めて永続的な分子であると信じていたが、リンダール氏はDNAが実は地上において生命の進化を妨げる程度の遅さで損壊していることを明らかにした。この予測より、リンダール氏はDNAの崩壊を持続的に妨げる分子構造を発見することになった。アジズ・サンジャル氏は、細胞が紫外線によるDNAのダメージを修復するために使用するヌクレオチド切除修復メカニズムのマッピングを作成した。ポール・モドリッチ氏は、細胞が、細胞分裂の際にDNA複製で発生するエラーをどのように修正するのかを発見した。」

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日本でもノーベル賞を受賞される科学者や技術者など、受賞まではほとんど国民に名前も知られずにひっそりと地道に研究にいそしんでいるものだが、このアジズ・サンジャル氏もしかり。「トルコ人がノーベル賞を受賞した!」「アジズ・サンジャルって誰だ!?」と現地では大騒ぎになったとのこと。

彼の出身地マルディンでは、一時期本人が地元の診療所で多くの人々に尽くしていたこともあって、彼の名前はほとんど伝説のようになっていたそうだが、今回の快挙でマルディンはお祭り騒ぎになっているとか。

高校時代には勉学よりもサッカーに打ち込んでいたというサンジャル氏。もともとナショナリストの家庭に育ち、本人もトルコ国旗を胸にプレーできることに誇りを感じていたという。
アメリカに移り住んでも祖国への思いを強く持ち、アメリカでのトルコ人学生の支援と、トルコ文化をプロモーションする非営利団体「 アジズ・グウェン・サンジャル基金」を設立、若い世代の育成に力を注いでいる。

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2015年11月5日木曜日

トルコ総選挙結果

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11月1日に行われたトルコのやり直し総選挙は、結果として現与党の保守派AKPが政権を奪還して幕を下ろした。6月7日の総選挙で過半数割れを起こしたAKPは、他党との連立協議が難航し、今回やり直しという博打に出たわけだが、今回はどうにか威厳を保つことに成功した形である。

6月との比較で見てみると、クルド系左派HDPと右派MHPから票を取り戻したようである。

【6月】AKP:40.87%  CHP:24.95%  MHP:16.29%  HDP:13.12%
【11月】AKP:49.49%(▲)  CHP:25.31%(▲)  MHP:11.90%(▼)  HDP:10.76%(▼)

6月以降、トルコ政府はスルチでの自爆テロへの報復としてシリア領内のISを攻撃するとともに、クルド系組織への攻撃も強めた。頻発するテロ事件の中で、ドサクサ紛れにクルド人への憎悪を掻き立てHDPの勢力をそぎ落とそうという意図も感じられなくもない。実際に、トルコ国内の内政事情の悪化が民族主義的な対立構造にすり替えられた感があり、それはまるで、9.11以降世界中が『キリスト教vsイスラム教』の対立を煽った状況とよく似ていると思う。決して宗教対立ではないはずの争いが、このフレームに当て込まれて報道され、解釈され、拡散し、「イスラムヘイト」「イスラモフォビア」といった次の悲劇を生む図式である。実際に、トルコ国内ではテロへの抗議や平和デモなどの動きに対して民族主義的な一派が衝突するなど、世情は不安定さを増している。クルド人居住地域ではクルド人への軍部による弾圧も行われるなど、和平交渉は事実上棚上げ状態である。

今回の選挙結果を6月と比較したときに、右派(MHP)と左派(HDP)から保守(AKP)に票が流れ込んだ状況は、民族的な対立構造が深まることに嫌気がさした人々が安定を求めた結果と言えるのかもしれない。

ちなみに、国外居住者による在外投票結果というのもあって、こちらがその国によって全く得票率が異なっており、大変興味深かった。
以下、各国ごとの得票順位と%を記してみる。

アメリカ:①CHP49.3% ②HDP22.3% ③AKP20.0% ④MHP5.7%

カナダ:①HDP:34.6% ②AKP30.6% ③CHP29.8% ④MHP3.3%

オーストラリア:①AKP47.8% ②CHP27.7% ③HDP17.4% ④MHP4.6%

日本:①HDP46.7% ②AKP37.8% ③CHP11.3% ④MHP:2.6%

中国:①CHP46.4% ②AKP23.4% ③HDP17.6% ④MHP9.6%

ロシア:①CHP42.3% ②AKP27.2% ③HDP19.8% ④NHP8.7%

ドイツ:①AKP59.7% ②HDP15.9% ③CHP14.8% ④MHP7.5%

オーストリア:①AKP69.0% ②HDP13.0% ③CHP9.8% ④MHP6.3%

フランス:①AKP58.4% ②HDP25.8% ③CHP8.6% ④MHP5.3%

イギリス:①HDP54.5% ②CHP21.4% ③AKP20.2% ④MHP2.4%

オランダ:①AKP69.7% ②CHP11.7% ③MHP9.1% ④HDP7.9%

スイス:①HDP45.7% ②AKP29.1% ③CHP17.8% ④MHP5.6%

イタリア:①HDP36.9% ②AKP36.8% ③CHP22.7% ④MHP2.1%

サウジアラビア:①AKP58.7% ②CHP31.3% ③HDP5.4% ④MHP2.9%

・・・まだまだあるが、キリがないのでこのあたりで打ち止めにする。

こうしてみると、国外居住者の間ではCHPとHDPの得票率が高い国が目立つ。
※CHPが1位:アメリカ・中国・ロシア/HDPが1位:カナダ・日本・イギリス・スイス・イタリア

一方、AKPが1位となっている国は、二位以下を圧倒的に引き離しているところが目立つ。
※ドイツ・オーストリア・フランス・オランダ・サウジアラビアなど

国ごとのトルコ系移住者のメンタリティやそれぞれのコミューンのあり方などに違いがあるのだろうか。大変興味深い。

<情報元>
http://secim.haberler.com/2015/


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