エルドアン首相(60)は1日、首都アンカラで「民選の大統領がトルコを飛躍させる」と声高らかに演説を行い、8月に実施される大統領選への出馬を表明。大統領を国民が直接選ぶのは今回が初めて。エルドアン氏の当選が有力視されている。とはいえ、第1回投票で過半数を獲得できない場合、ライバル候補が力を結集してエルドアン氏に対抗するとみられている。その場合、人口の2割近くを占めるクルド人が行方を左右するのではとも言われているが、「勝てない選挙に出るわけがない」エルドアン首相の勝利はほぼ間違いないと見るのが妥当だ。
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今のトルコは、エルドアン首相率いる与党の公正発展党(AKP)と世俗主義政党の共和人民党(CHP)と極右政党の民族主義者行動党(MHP)との戦いである。野党側は統一候補としてイスラム協力機構(OIC)の前事務局長のエクメレディン・イフサンオウル氏(70)を擁立。しかし、国際問題やアラブ世界における同氏の実績を知る人は少なく、ほとんど知られていない対立候補が選挙戦に勝つことは常識的に考えてあり得ないのではないだろうか。
エルドアン氏についていつも言われること、それは2003年に首相に就任しトルコ経済に高成長をもたらした功績は大きい。一方、反対勢力を「敵」として見なして激しく攻めまくる「強権」に対する懸念のくすぶりも否定できない。トルコはEU加盟を望んでいるが、人権侵害に対する懸念も浮上しているほどだ。
昨年末、汚職疑惑が急浮上し、エルドアン氏は「対立する宗教団体が捜査機関に浸透して政権を攻撃した」と非難した。捜査機関幹部を更迭し危機を乗り切ったものの、長期政権の明らかな「ひずみ」と周りでは受け止められている。
今のトルコと日本はなんとなく似ている気がする。以前、民主党が突如として政権をとった。しかし、不慣れ未熟の行き当たりばったりの思いつき政策で国民の信を失いあっと言う間に自民に政権を奪還されてしまった。民主党の不甲斐なさの記憶は新しい。鳩山さん、菅さん、野田さん、いずれも時代の変化の弾みで歴史のイタズラとも思える人が首相になってしまった。
エルドアン氏は「光と影」の両方を併せ持っている。光の大きい分、影も大きい。振り子の振り幅に似ている。その意味ではエルドアン氏はトルコを牽引する英雄なのかもしれない。問題はエルドアン氏に代わる今のトルコに必要なより良い政治家が見当たらないこと。これは今の日本の野党の実態と重なる。集団的自衛権の行使容認、憲法解釈変更の閣議決定を十分な議論を尽くさず拙速に押し切ってしまった安倍さん。それに対して国民の意思を代表してなんら対抗できないリーダー不在の野党。そんな図柄がダブってみえてくる。
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