トルコ国内でも、暴力的報復への嫌悪、表現の自由擁護、逆に表現の行き過ぎへの嫌悪、イスラモフォビア(イスラム恐怖症)の助長への懸念、果ては襲撃の肯定など、反応は様々です。
大手新聞社であるCumhuriyet紙が1月14日付の新聞でシャルリー・エブドの最新号からいくつかの風刺画を抜粋して4ページ分掲載する、という情報を受け、警察が裁判所の決定なしに出動し印刷所に立ち入り捜査を決行(1月14日付Milliyet紙)。選定されたコンテンツの中に、件のムハンマドを風刺した表紙絵が含まれていないことを確認した後、 配達トラックの出発を許可したとのこと。また、Cumhuriyet紙の風刺画掲載に対して寄せられるであろう反発を考慮し、周囲に警戒態勢が敷かれました。
実際に、Cumhuriyet紙の風刺画掲載決定に対し、「シャルリー・エブドの挑発を継続している」などのパンカードが新聞社の壁に掲げられるといった抗議行動もありました。
また、SNSで拡散されたCumhuriyet紙襲撃の呼びかけに応じた一部の人々が建物前に集まり「(実行犯の)クアシ兄弟は我らの誇り」とのスローガンを叫ぶといった騒動も(1月14日T24)。
Cumhuriyet紙のウトゥク・チャクルオゼル編集長は次のようにコメントしています。
「我々は表現の自由を侵害する今回の攻撃を激しく憎む。シャルリー・エブドへの連帯を示すため、同誌の特集号から4ページ分ピックアップして弊社の紙面に載せた。選定にあたっては社会の信仰の自由と宗教感情に対して十分配慮したつもりだ。事前に多く寄せられた忠告を受け、雑誌表紙に掲載された風刺画は載せない形で発行した。」(1月14日付Cumhuriyet紙)
実際の抗議行動は限定的ではありますが、宗教感情を逆なでされたことで、イスラム教徒としての同朋意識が強まっている部分は否めません。
そういった声に対し、首相からは次のようにコメント。(1月13日付けMilliyet紙)
「我々はヒューマニティーの掲げられたところに行くだけだ。我々があの場にいることが道理に適った真摯な対応であるのに対し、イスラエル首相があの場にいることがいかに不相応で不誠実であるか、それを世界に知らしめたし、今後も主張し続けていく。」
「我々は、国家的テロを実行する人々や国家に対して声を挙げ続けて行く。イスラエルの暴政も、スカッド・ミサイルで人民を殺戮するアサド政権も、同様に国家的テロと呼び続ける。今回の集会に参加した中で、このように両サイドの見解を持つ国は唯一トルコだけだ。」
「まず、オランド首相とメルケル首相が、テロ行為とイスラム教を同一視しない、との見解を示されたことに感謝する。テロ対策はもはや一国の国内の問題ではない。テロはどこで誰に対して為されてもおかしくない。世界中がテロに対して力と情報を連携しなければならない。」
「イスラム世界に告ぐ。どうか政教分離を取り入れてほしい。政教分離は信仰を守る。政教分離を無神論と決めつける人々がいたが、そうではない。政教分離とは、人々の信仰に政治が介入しない、という意味だ。政教分離はテロに対する解毒剤だ。武器を持って人々を殺すことはイスラムではない。」
いずれも、イスラム教そのものと過激派の行為は別のものと切り離し、世界的に広がろうとしているイスラムヘイト、イスラモフォビアへの懸念と同時に、そういった動きへの反発として過激派に同調する国内ムスリムの動きも牽制しています。
トルコが建国以来抱えてきた政治と宗教の微妙な均衡が崩れることへの牽制とも言えるでしょう。
トルコが建国以来抱えてきた政治と宗教の微妙な均衡が崩れることへの牽制とも言えるでしょう。
また、クルチダルオール氏の発言の中には、現AKP政権の対シリア政策への批判も含まれています。
「テロはパリだけで起こっているのではない。ナイジェリアで2000人が殺された。レバノンで、イェメンで、またつい先日、イスタンブールのスルタンアフメットでも自爆テロにより警官が殉職した。間違った対シリア政策により、過激派グループをトルコのすぐ隣に呼んでしまったのだ。その政策ではトルコにしわ寄せが来ると何度も忠告した。結果的に、世界中から過激派要因を持ち込み、過激派への参加者はトルコ経由でシリアやイラクへ入国している。」
トルコのムスリムもそのほとんどは良識ある敬虔なムスリムであり、過激派によるテロの脅威にさらされていることに変わりありません。
ダウトオール首相が外国人記者に対し次のようにコメントしています。
『宗教や文化の異なる人々が共存し、誰も排除されない環境が守られるべきだ』
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