さて、トルコとEPAを進めて行く上で、対トルコビジネスにおいては他国企業と同等あるいはよりいい好条件を確保する必要がある。そのためには、2013年5月発効済(枠組み協定、物品貿易協定)の韓国・トルコFTAをベンチマークする必要があると言われる。
物品をはじめ、サービス、投資、政府調達、ビジネス環境整備の分野も一括して交渉を行うなど、同FTAを上回る包括的EPAの交渉が期待される。その際、各交渉分野について以下の点がEPAの主要項目となり、下記交渉内容が期待されるところである。
長くなるが、重要ゆえに、あえて、ここに紹介しておきたい。
以下の記載については、ジェトロ「日本・トルコ経済連携に関する研究会・報告書」(2013年7月)を抜粋・引用としている。
1.市場アクセス(関税、原産地ルール)
トルコはEUと関税同盟を形成。しかし、域外国との特恵関税の設定については一定の自由度がある。この点を踏まえれば、交渉が開始予定の日EU・EPAと同時平行、あるいは先行して関税撤廃交渉を行うべきである。
一般特恵関税(GSP)をみると、例えば、タイからの自動車の輸入について、EUの税率は6.5%。一方、トルコの税率は10%と一般税率と同じ。原産地の判定基準(付加価値基準、関税分類変更基準)については、自由度の高い選択型が望まれる。原産地証明書の発給制度について、韓国EU・FTAが認定輸出者による自己証明であるのに対し、韓国・トルコFTAでは輸出者による自己証明制度を導入している。わが国は第三者証明制度に加えて、近年のEPAでは認定輸出者による自己証明制度を併用している実績を有する。こうした状況を踏まえつつ、トルコ側の要望や、原産地の真正性確保ができるかどうかという点を慎重に把握した上で交渉を進めるべきである。
2.投資ルール・サービス貿易
サービス・投資の交渉は物品貿易の交渉と一括して行い、包括的なEPA交渉を
検討すべきである。サービス貿易についてトルコは、これまで締結したFTAの交渉項目に盛り込んだ実績はなく、WTO協定の一部である「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)」ではポジティブリスト方式となっている。日本としてはネガティブ・リスト方式で、WTO上の約束を越える自由化を目指して交渉することが望ましい。投資については、出来るだけ高いレベルの規律の実現に努めることとし、日本・トルコ投資協定を上回るものを目指す。
なお、韓国・トルコFTAでは、サービス・投資の交渉は、枠組協定・物品貿易
協定の発効後1年以内の妥結を目指すとされており、関税削減・撤廃を含むモノの自由を先行させ、続いてサービス・投資の自由化交渉をすすめるという2トラックのアプローチをとっている。
3.政府調達
トルコはWTO政府調達協定(GPA)のオブザーバー参加国にとどまっており、
これまでの締結したFTAにおいても、政府調達については触れていない。またトルコはEUとの加盟交渉においても、政府調達分野は、最終段階での交渉を予定している。
日本トルコEPAでは政府調達を交渉項目として取り上げることが必要である。トルコ側がこれに同意しない場合でも、日本企業のトルコにおける政府調達への参入の円滑化を図るよう、ビジネス環境整備委員会などの場を通じて、トルコ側に求めていく必要がある。
4.知的財産権
日本企業が知財の問題に直面している現実に対応し、TRIPSを越えた規律の実
現に努めることが必要である。この点で、日本・スイスEPAや交渉が終結したACTAが参考になる。また規律強化のみならず、その運用について当局同士の情報交換を促進し、必要に応じてトルコに技術的支援を行うことが必要である。制度改善実施面では、ビジネス環境整備委員会などの場を通じて協力体制を構築する必要がある。
5.税関・通関手続き、貿易円滑化
通関の遅延や見解の相違などによるトラブルなどを防ぐため、当局同士の適
切な情報交換を進めることや、ビジネス環境整備委員会などの場を通じて、対
策について検討しあう仕組みを構築する。
6.基準認証
WTOに則った運用を確保する。日本にとって排他的な規格が存在しないかの再
確認の必要がある。
7.人の移動
ビザ取得の迅速性、透明性を確保すべきである。短期商用訪問者、企業内転
勤者、専門家、投資家等の入国及び一時的な滞在等の許可について定めると共に、それに関連し必要な要件や手続の透明性の確保及び簡素化・迅速化を規
定すべきである。
また、2011年3月2日、トルコの社会保険規則が改正され、トルコへの派遣
期間が3カ月を超える外国人労働者を対象に、トルコの社会保障制度への加入
が義務付けられた。これにより、トルコに進出したわが国企業の駐在員に社会
保険料の二重負担が生じている。すでにトルコと社会保障協定を締結済みの国
の企業と比較してわが国企業が競争上不利となっており、日・トルコ社会保障
協定の早期締結が必要である。
8.ビジネス環境整備
日本が締結したEPAにおいては、相互の貿易や直接投資の発展・促進に資する
取組として、ビジネス環境を一層整備するための規定を設け、「ビジネス環境
整備委員会」を設置してきた。日本トルコEPAでも協定に同委員会の設置を盛り込むことが重要で、同委員会を通じて産業界が直接労務、税務等における改善や、各種制度の適正化や明確化などを、トルコ側関係当局に求めていくことが可能となる。
なお、すでに日本トルコ間では、「日トルコ貿易投資閣僚会合」の高級事務
レベル会合である経済・貿易委員会(ETREC)を開催し、ビジネス環境整備の協議を開始しているが、要すれば「ビジネス環境整備委員会」と同委員会との関係を調整ありたい。
9.その他の項目
電子商取引については、WTOの場で議論が停滞している状況から、国際的ルー
ル作りの進展のため、日本・スイスEPAの電子商取引章を参考に、トルコと日本の間でもその導入を検討すべきである。
環境・労働については、過去に日本が締結したEPAにおいて「章」を設けた実
績がないため、他国のFTAの例を参考にしながら、日本・トルコEPAにおいて如何なる要素を盛り込むのか議論を行う。
競争については、無差別待遇、手続きの公正な実施及び透明性といった競争
政策の基本原則に基づいて反競争的行為への適切な措置をとること及び両国の
協力を促進するとの内容を盛り込むことを検討する。
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