2013年12月29日日曜日

トルコ進出を加速するカゴメ その2

トルコ進出を加速するカゴメと題して第2弾を報告する予定が、すっかり時間が経ってしまった。その間トルコでは、地域開発計画の許認可に絡んだ贈収賄疑惑で閣僚の息子たちが次々に摘発され、5閣僚が辞任し政情が混沌としている。エルドアン首相はこの25日、10人の新閣僚を発表、大幅な内閣改造で乗り切る構えだ。しかし、20人余りいる閣僚の半数を入れ替えるわけで、辞任した閣僚からも首相批判が飛び出している。トルコ国内では首相退陣を求めるデモも始まった。年明けの1月7日、8日には経済連携の強化を目的にエルドアン首相一行が日本訪問を予定しており、難局を乗り切れるかどうか注目される。

さて、話しを戻して、カゴメのトルコ進出に関する続き。
カゴメはトルコを含め世界各地で長年に渡りトマト分散栽培を進めている。製品原料のトマトの調達を安定させ、市場で取引される商品作物と一線を画すことで、経済情勢や気候の変動リスクを回避するのが狙いである。その背景にはカゴメの創業時から培ってきた「種まき」の思想がある。それが世界各地の風土にあわせて開発したトマトの種を農家に託す長期契約栽培である。

栃木県那須塩原市にあるカゴメ那須工場・総合研究所では、世界各地の気象条件にあわせて開発した品種が栽培されている。需給問題解決には、カゴメ専用のトマトの種を契約農家に提供し買い取るもので、トルコを含めアメリカ、ポルトガル、イタリア、中国など世界各地で進められている。カゴメの「脱市場」の取り組みは、契約農家を囲い込むことと、農家に渡すトマトの種も各地の風土にあうよう改良を重ねることで不作のリスク・ヘッジの狙いもあるようだ。そのきっかけは、世界有数のトマト生産国であるトルコ進出のときからという。1982年、今から遡ること30年前である。

日本で販売するトマトジュースやトマト加工品は原料の質に左右されるため、カゴメはトルコの気候風土にあった種の開発に取り組んだ。カゴメの社員がトルコの農家に出向いて種のまき方から水のやり方まで指導し、トマト果汁の濃縮機械も持ち込んで二人三脚で取り組んできたという。

これはカゴメの先代からのDNAと言える。トマト栽培は、カゴメ創業者の蟹江一太郎氏が1899年に始めた。国内外の研究所から種をもらい交換をしたり、カゴメ社員が国内外の栽培地に地道に出向いて種を集めることはカゴメの伝統という。カゴメ総研では毎年、こうして集めた種を数百種類、交配させている。3段階の中間試験を経て、商品化に向けた最終試験に辿り着くまで数年かかり、年間10-15種類がその候補に残る。そして、世界各地の農園に持ち込まれ、栽培用に登録されるのは、年間1~2種類の「狭き門」という。

以下の商品はカゴメのトルコ産のトマトペースト。甘味、酸味、うま味のバランスが好評。(写真はKAGOME FOOD SERVICE INFORMATIONより)



トルコと日本の関係を捉えるとき、エルトゥールル号やイラン・イラク戦争のときの日本人救出劇に話題が向きがちだが、食の世界でもトルコと日本が30年に渡ってこういった地道な交流がなされていたことは新鮮な驚きと言える。カゴメのトルコ進出は一方的なトルコへの経済進出ではなく、双方向に便益を与える好例でもある。ツーリズムの世界でも「ツーウエイツーリズム」という言葉がトルコと日本の間で交わされている。今後、あらゆる分野で「ツーウエイ」「双方向」が進んで欲しい。


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