2015年11月5日木曜日

トルコ総選挙結果

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11月1日に行われたトルコのやり直し総選挙は、結果として現与党の保守派AKPが政権を奪還して幕を下ろした。6月7日の総選挙で過半数割れを起こしたAKPは、他党との連立協議が難航し、今回やり直しという博打に出たわけだが、今回はどうにか威厳を保つことに成功した形である。

6月との比較で見てみると、クルド系左派HDPと右派MHPから票を取り戻したようである。

【6月】AKP:40.87%  CHP:24.95%  MHP:16.29%  HDP:13.12%
【11月】AKP:49.49%(▲)  CHP:25.31%(▲)  MHP:11.90%(▼)  HDP:10.76%(▼)

6月以降、トルコ政府はスルチでの自爆テロへの報復としてシリア領内のISを攻撃するとともに、クルド系組織への攻撃も強めた。頻発するテロ事件の中で、ドサクサ紛れにクルド人への憎悪を掻き立てHDPの勢力をそぎ落とそうという意図も感じられなくもない。実際に、トルコ国内の内政事情の悪化が民族主義的な対立構造にすり替えられた感があり、それはまるで、9.11以降世界中が『キリスト教vsイスラム教』の対立を煽った状況とよく似ていると思う。決して宗教対立ではないはずの争いが、このフレームに当て込まれて報道され、解釈され、拡散し、「イスラムヘイト」「イスラモフォビア」といった次の悲劇を生む図式である。実際に、トルコ国内ではテロへの抗議や平和デモなどの動きに対して民族主義的な一派が衝突するなど、世情は不安定さを増している。クルド人居住地域ではクルド人への軍部による弾圧も行われるなど、和平交渉は事実上棚上げ状態である。

今回の選挙結果を6月と比較したときに、右派(MHP)と左派(HDP)から保守(AKP)に票が流れ込んだ状況は、民族的な対立構造が深まることに嫌気がさした人々が安定を求めた結果と言えるのかもしれない。

ちなみに、国外居住者による在外投票結果というのもあって、こちらがその国によって全く得票率が異なっており、大変興味深かった。
以下、各国ごとの得票順位と%を記してみる。

アメリカ:①CHP49.3% ②HDP22.3% ③AKP20.0% ④MHP5.7%

カナダ:①HDP:34.6% ②AKP30.6% ③CHP29.8% ④MHP3.3%

オーストラリア:①AKP47.8% ②CHP27.7% ③HDP17.4% ④MHP4.6%

日本:①HDP46.7% ②AKP37.8% ③CHP11.3% ④MHP:2.6%

中国:①CHP46.4% ②AKP23.4% ③HDP17.6% ④MHP9.6%

ロシア:①CHP42.3% ②AKP27.2% ③HDP19.8% ④NHP8.7%

ドイツ:①AKP59.7% ②HDP15.9% ③CHP14.8% ④MHP7.5%

オーストリア:①AKP69.0% ②HDP13.0% ③CHP9.8% ④MHP6.3%

フランス:①AKP58.4% ②HDP25.8% ③CHP8.6% ④MHP5.3%

イギリス:①HDP54.5% ②CHP21.4% ③AKP20.2% ④MHP2.4%

オランダ:①AKP69.7% ②CHP11.7% ③MHP9.1% ④HDP7.9%

スイス:①HDP45.7% ②AKP29.1% ③CHP17.8% ④MHP5.6%

イタリア:①HDP36.9% ②AKP36.8% ③CHP22.7% ④MHP2.1%

サウジアラビア:①AKP58.7% ②CHP31.3% ③HDP5.4% ④MHP2.9%

・・・まだまだあるが、キリがないのでこのあたりで打ち止めにする。

こうしてみると、国外居住者の間ではCHPとHDPの得票率が高い国が目立つ。
※CHPが1位:アメリカ・中国・ロシア/HDPが1位:カナダ・日本・イギリス・スイス・イタリア

一方、AKPが1位となっている国は、二位以下を圧倒的に引き離しているところが目立つ。
※ドイツ・オーストリア・フランス・オランダ・サウジアラビアなど

国ごとのトルコ系移住者のメンタリティやそれぞれのコミューンのあり方などに違いがあるのだろうか。大変興味深い。

<情報元>
http://secim.haberler.com/2015/


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